DTM・プラグイン系

WAVES MUSIC MAKER ACCESSがはじまったのでDTM系サブスクリプションを考える

音楽制作系のサブスクリプションの形態を考えると、実はやれることはそう多くなくて、ざっと俯瞰すると

1 プラグインのレンタル
2 ユニバーサルなDTM環境
3 サンプリング音源とプリセット
4 ディストリビューション
5 ミキシング/マスタリング
6 作曲スクール/コンサルティング
 

大体この辺に収まる。

プラグイン、DTMのサブスクリプション

1,2のプラグイン、DTMのサブスクにはメリット、デメリットともに大体2つぐらいある。

メリット1初期費用が抑えられる:第一にランニングコストがかかる代わりに初期費用が下がる点がある。DTMは基本的にハード周りだけでも結構初期費用がかかる。オーディオインターフェイスとヘッドフォン、あとはそもそものパソコンのスペックが低いと当然動かない。そこに初期費用をかける代わりにソフトウェアや追加機能にはランニングコストで対応する、というのは一つのやり方だと思う。

メリット2アップデートへの対応:第二のメリットとして、アップデートへの対応がある。たとえばiZotope製品なんかは驚くほど製品のライフサイクルが短い(=数年でプラグインのメジャーアップデートが走ってすぐに製品が古くなる)ので、買い切りにすると最新の機能のキャッチアップのために結局数年おきに数万使うことになる。キャッチアップをしないとOSのアップデートに対応できずにソフトウェア自体が使えなくなったりする。Ableton Live 9がmacOS Catalinaでろくに動かなくなったあたりもその話に該当する。ずーっと同じ環境でやり続けるならいいのかもしれないけど、すると今度最新のプラグインを入れた時にOSが古すぎて対応しなかったりっていうこともある。

デメリット1使わないと損:デメリットとしても2つあって、第一に月額(あるいは年額)課金なので、端的にいうと使わないと損。使う頻度が下がれば下がるほど「これ解約しないとな…」という気持ちが高まる。まあ本当はコスト感を知るにあたって買い切りのソフトウェアでもちゃんと償却する(買い切り価格をおよそ使う年数や月数で割って年額/月額いくらぐらいで使うものなのかを考える)べきなんだけどね。

デメリット2解約すると使えない:デメリット2つめは、(めちゃくちゃ当たり前のことなんだけど、)解約すると使えなくなる。これはつまり、いま制作した楽曲を5年後に作り直そうと思い立っても、その時にDTMソフトを変えていた場合にはプロジェクトファイルを開くこともできない。開いてパラ出しで吐き直すためだけにまた昔のサブスクを契約し直す必要があるし、なんならサービスが終了していたら永遠にそのファイルは葬り去られる可能性すらある。その辺の不確実性は割とリスクかなとは思う。まあDTMソフトのサブスクリプションは結構重いので各社あんまやりたがらないとは思うけど。

3のロイヤルティフリーのサンプル素材に関しては、SpliceとかADSR(サンプル音源からソフトシンセのプリセット、チュートリアル系まで扱うサイト)、LANDR Sampleなんかが該当するところで、単純なサンプルの提供だけなら正直買い切りでいい話だと思う。それがサブスクになっているのは、「1 サンプル音源の管理までサービスに含める」「2 取り放題にした方が結局制作が捗る」ぐらいの話かな。たとえばADSRはサンプル音源がどうこうというより、DAWのプラグインADSR Sample Managerの方が有名なんじゃないかと思う。

僕もこれは使っていて、LANDRサンプルで落としてきたファイルをGoogle Driveに入れておいて、それを自動でADSR Sample Managerがライブラリに読み込む形にしている。結構便利だけど、Live 10のトラックにSample Managerを読み込んだ時にたまーーーにLiveごと落ちる時がある。本当に怖い。

ディストリビューション、ミキシング、マスタリング

ディストリビューション(Apple MusicやSpotifyへの配信代行)サービスも最近はかなり出てきてるけど、これこそサブスクリプションでやるべきだと思う。俺はずっとTuneCoreの買切り制に不満を述べていて(だから使うのをやめたのだが)、LANDRのディストリビューションのビジネスモデルが割と正しいような気がしている。

LANDRはいわゆるAIマスタリングサービスから始まったけど、そこから「曲仕上げたんなら配信もしたくない?」っていう極めて自然な流れでディストリビューター業務に参入した。そこから最近はさらにプラグインレンタルとサンプリング音源のサブスクも始めた。マーケティングでいうところのいわゆる川上統合(アパレルメーカーがそれ以前の行程である生地の生産にも参入)・川下統合(生地メーカーが生地生産以降の行程であるアパレル製造にも参入)に近いんじゃないかなあ。もちろん直接的な物流関係はないんだけど、ユーザー側の作業行程の中で少しずつLANDRが関わる領域を増やしていこうというバランス感覚は意外と悪くない。

ちなみにLANDRは最近プラグインレンタルにも参入したんだけど、ここでLANDRが面白いのは、rent-to-ownのビジネスモデルなんだよね。公式でも「お手頃な料金のプランでレンタル又は一定期間のレンタル後に自分のものになります」という表記の通り、最初はサブスクリプションで「借りる」状態なんだけど、サブスクリプションでお金を払い続けるのは勿体無いのである期間を過ぎるとレンタルから購入済みに変わる。たとえばいま始まってるLethal AudioのソフトシンセプラグインLethalに関しては、月$9.99でレンタルして、20ヶ月続けると購入済みになる。それまでにいらなくなったら解約できる。これなかなか面白い。サブスクリプションとは言ってるけど、実際には「要らなくなったら途中でキャンセルできる分割購入」っていう形態に近い。一般的には「体験版でフル機能が利用できるのは最初の1週間」とかっていうのが多くて、それだとなかなか自分の制作のワークフローに組み込んで使い込める状態になるまで時間がかかるから評価が難しかった。そういう意味で消費者側は購入の柔軟性が上がるんじゃないかな。

ディストリビューションはどうせ契約と支払いが一致しているので、これこそ買切りである必要がない。「配信の申請だけなんだから買い切りでいいでしょ」というほど単純なものではなく、毎月の統計や収益の取りまとめなどが(もちろん自動化はされるが)必要になるのでサブスクになるのはアリなんだよ。ただその一方ミキシング、マスタリング系のサービスについては正直買い切りでいいような気がする(今の所ミキシングのサービスってあんまないんだけどね)。サブスクの良さがあんまり出てないんじゃないかね…

最後のスクールとかコンサル系はこれまでも伝統的にあったビジネスをサブスクの枠に押し込んだだけなのでどうでもいい。

WAVESのサブスクリプションが始まった

ところで先週ぐらいからfbにWAVESの広告がちょくちょく出てきていて、中身はWAVESプラグインのサブスクリプションサービスWAVES MUSIC MAKER ACCESSを始めるというもの。初月無料。

なかなか面白そうだなあとか思って見ていたら、基本プランはこれまでにもあったWAVESのSilver、Gold、Platinumの各パックを月額/年額で契約できる形。一番おすすめとされる中位ランクのGOLDは月額$9.99、年額$99.99に設定されていて、正直WAVESのプラグインで年100ドルは圧倒的に安い。支出の平滑化という観点、あるいはアップデート関連のリスクとして考えても、変にブラックフライデーあたりのセールで買い切りを狙うよりこっちの方が遥かに安定的になる。

個人的には必要なプラグイン5〜10個ぐらいをアラカルト的に選んで契約できる形がベストなんだけどなあとか思っていたところ、Gold、Platinumに限ってEligible for bonus 5-packとのこと。要は追加で自由に5パック選んで契約できるよというもので、ボーナスプランが紹介されている。

WAVESのプラグインファミリーから5パック選んで月8ドルで契約できるよというもの。

いや、ただこれって、Goldのお得感に比べて圧倒的に高くない?なんでこんな高いの?どっちかというとGOLDなしでこれ単体で契約できれば満足なんだけどなあ。

GOLDは基本的なC1 Compressor、DeEssor、Doublerなどのファミリーになっていて、いわゆるシグネチャー系のプラグインは含まれていない。

僕がWAVESのプラグイン使うのは主にボーカル処理で、だいたいWAVES Tunes、CLA系のCLA Vocal、MannyM系で EQ / Reverb / Delay / Triple Dぐらいなんだよねぇ。だからCLA(Chris Lord-Alge)、Manny M(Manny Marroquin)のシグネチャーとTunes系ぐらいあればよくて、むしろGOLDこそいらないんすよね…GOLDだとWAVES TunesはLTしかついてこねーし…それより上流/下流のレイヤーはノイズ処理から最終的な2-mixまで全部iZotope製品で処理するので…(RXとOzoneは神)

だからGOLD抜きのCUSTOM PACK直契約で、5種で$9.99、7個$14.99、10種$18.99ぐらいの値段設定にしてくれないだろうか!!!それだったら秒速で10PACKで契約するのだが!!!

ちなみに最近明らかにiZotopeがんばってるのでこのままWAVESからフェードアウトするっていうのもアリかなあという気もしている。

そのほかには

あと使ってるのはニューラルネットワークを使って(まあたぶんLSTMとか使ってんだろうな)アカペラと各楽器を分離できるPhonicMind(これこそサブスクリプションで処理し放題みたいなビジネスモデルになってほしいんだけど)とかかな。

ちなみに

ちなみにiZotopeがDAW作るっていうのも割とありな話で、わざわざ全トラックにNeutron全挿しするならトラックにもともとDAWレベルでNeutron、マスターにOzoneがくっついたようなDAWを作っちゃえばいいわけだ。その辺は

まあマシンスペックは結構必要になりそうだけどね。