現代の3大発明なる話

現代の3大発明なる話

「現代の3大発明はAI, IoT, ビッグデータだ」という出典のわからない言明がある。あるんだけど、正直これはちょっとどうかなと思ってしまう。
そもそもこの3つは並列に並べられるレベル感の要素ではないように思う。例えばビッグデータを本当に単なる大規模データと位置付けても、あるいはデータの収集、蓄積、整理、検索、分析、提示まで一貫した情報システムと考えても、いずれにせよこれはAIを支える基盤部分に内包されてしまう。
今のAI技術の強みは非構造データへの教師なし学習だと思うんだけど、それを丸ごと含めようと思ったら3大発明のうち一つはビッグデータからクラウド、AIまで含めた(つまり要素技術からアルゴリズムまで全部内包した)かなり広義の「機械学習」、あるいはさらに統計解析まで加えた「データ分析」になるべきなのではないかな。

もっというと、誰しもが個人でスマートフォンという高性能デバイスを持ち歩くようになったことによるデータ収集の変化もある。実社会での行動に関するリッチなログデータが得られるようになったのはここも大きい。
スマートスピーカーなんかは、つまるところすごいのは機械学習による音声認識(=文字起こし)と、そこから文意を汲み取って既成の関数やAPIに繋げる部分なので、これはAIの中に入る話だと思う。質問に対してAlexaやSiriが気の利いた返しをするのは人が考えているところであって、「AIとの会話」という面で強いのはMicrosoftのりんなだ。

一方IoTについても考えてみると、モノの通信それ自体の実現だけならAIやビッグデータはいらないし、むしろ必要なのは通信技術としての5Gなのではないかな。「どこもかしこもモノが通信している」という環境をWi-Fiで実現しようと思ったら町中にメッシュネットワークを張り巡らせる必要が出てくる。同時接続数や通信回線の太さまで考慮すると、大量同時接続で監視カメラなんかの映像まである程度リアルタイムに飛ばせるはずの5Gを使ったほうが社会へのインパクトは相当大きくなる。

もちろんセンサー系のIoT(256kbpsでの定期的なデータ送信とかで済むようなもの)まで5Gにすべきなのかと言われたらそこはちょっと違うとは思う。思うけどそのために例えばナローバンドとしての3G回線やメッシュネットワークを維持するぐらいなら全部5Gに移行させたほうがいいんじゃないかな。

するとここまでで3大発明のうち2つは
・ビッグデータやAIまで含めた統計的機械学習
・最新の通信技術まで含めたIoT
で、となるともう一つの発明は量子コンピュータになるのかなあ。とはいえ量子コンピュータは現状では適用できる問題が少ないので、また違った意味でのレベル感(直近での社会への貢献の度合い)の差があるような気がする。

(デジタルにこだわらなければ)宇宙開発系やマテリアル系のような気もする。
まあそもそも「3大」にこだわる必要がないのだけれど。