最近聴いている曲とエモいR&Bとサウダーヂ

LAやNYの道端に座り込んでHip-HopやR&Bを1日中聴きながらぼーっと過ごしていたあの頃から5年、何者でもなかった僕も気づけば次の4月から大学の准教授らしい。人生どうなるかわからんもんやな。


なぜ今この音を僕らがR&Bと呼んでいるのかは謎だが、思えばいつだってR&BはHip-Hopのどす黒いベースや太いドラムなどの音作りから強く影響を受けてきたし、(あまり浸透しているようには思えないけど)Bryson Tillerの思いつきからTRAPSOULという言葉もできた。今の世の中で狂ったように流行っているいわゆる”チル系”みたいなのは、その実かなりがTRAPSOULに分類されてもおかしくないと思っている。

「夜に聞きたいHip-Hop」みたいなプレイリストは、いま30歳の僕としては10代〜30代まで、更新されながらいつの時代にもあった。ただ、それらは10年前にはいわゆるJazzy Hip-Hopを取り込んだものであったように思う。今はそういう”ジャジー系”、あるいは”Lo-Fi系”の音楽は、夜というよりはカフェ的なお洒落さに内包されているように思う。

このTRAPSOULが(特に日本やアジア圏において)「都会の夜に一人取り残されたぼくら」のようなイメージにつながるのには、その実オートチューン(auto-tune:ボーカル補正プラグイン)がかなりの貢献をしている。オートチューンがエモさにつながるというのはそういえば誰かもnoteにそんなようなことを書いていたが、TRAPビートの上にオートチューンでかなりキツい補正をかけたボーカルを乗せ、そこに濃くて短いリバーブをかける組み合わせは、現代R&Bにおける”エモさ”を醸し出すために欠かせない一要素となっている。

“エモい”という感覚を言語化することは難しいが、同僚の先生にそれを説明した際には、同じく言語化しづらい概念たるサウダーヂ(saudade, ポルトガル語: 郷愁、思慕…)に近いのではないかという話になり、なかなか印象的だった(ちなみにsaudadeな楽曲を探そうとすると日本ではどこまでもポルノグラフィティを検索よけしなければならず本当に大変)。

ちなみに日本では(みんなあんまり同意してくれないけど)この走りはJAZEE MINORだと思う。日本語ラップの中で一時期あれだけ引っ張りだこでちゃんとヒップホップシーンにいて、アルバム『BLACK CRANBERRY』の発売が2014年なので、そう考えると時代が追いついていなかったんじゃないかと思う。

いわゆる”チル系”が好きな人には是非ともAUGUST 31を聴いてほしい。

JAZEE MINOR – August 31

個人的にはJAZEE MINORで一番好きなのは”Wanna Know“と”今でもまだ“だけど、これも空気感が作り込まれていていい。あの当時JAZEE MINORは歌もラップもできる先鋒だった。

(実はJAZEE MINORは今は亡きmuzie(自称「日本最大級の無料インディーズ音楽配信&コミュニティーサイト」)に曲が上がっていた頃から聴いている)

JASMINE – YAMAHA

JAZEE MINORといえばいつの間にかEight Entertainmentの社長になっていたわけだが、Eight Entertainmentといえばやはりクラウドファンディングで目標額256%を達成し再始動したJASMINEで、先日リリースされたYAMAHAは周りでも聴いている人が結構多い印象がある。実はJASMINEもファーストシングル”Sad to Say”から聴いているけど、5lackを客演に迎えたFallin’なんかも90’sフレイバー溢れる雰囲気でとても良かった。


それ以外は相変わらずK-R&Bばかり漁っており、最近見つけた中ではこの辺がアツい。(一部貼ってあるもののYouTube外では再生できないものがある)

김승호 – I don’t wanna wake up feat. 비모

雰囲気がめちゃくちゃいい。特にHookの”I don’t wanna wake up this morning…”の前後半の展開なんかは最初期のTRAPからの系譜を継いでいる感じがいい。

2verse目の비모(BMO)を最初聴いたときはその声だけで完全に비비(BIBI)だと思っていた。楽曲NABIの雰囲気に似ていたので。

…ちなみにこの動画はぼくがここに貼る時点で再生数2だった。

K.vsh – How can you realize?

K.vshといえば元々はサンクラなどネット上を中心に活動していたところをフックアップされたラッパーで、今では有名な曲も多いけど、個人的にはこの”How can you realize?”が圧倒的に好きです。てっきりKushをもじっているもんだとばかり思っていて、ネット出身にしてはすげえヒップホップだなと思っていたんだけど実はCashをもじっているらしい。まあそれでも十分ヒップホップなんだけど。

미란이 – Daisy Remix feat. Paul Blanco & ASH ISLAND

こちらは미란이(Mirani)のpH-1を客演に迎えた原曲があり、そこにPaul BlancoとAsh IslandがRemixとなる。相変わらずPaul Blancoは才能に溢れている。

지바노프 – 너와같이 feat. Paul Blanco

同じくPaul Blancoを客演に迎えたものだとjeebanoffのMe and You(너와같이)の雰囲気はいい。なぜそんなにキックを重ねるのかと思うぐらい連打するけど、意外と邪魔に感じないのが不思議なところ。

Milky Day & Gareth.T – Youuu

それに近い雰囲気だと、(これは韓国ではないが)香港の気鋭のプロデューサーGareth.Tと組んだMilky DayのYouuuの空気感の作り込みは素晴らしいと思う。

oceanfromtheblue – Wings (Like Sisqo) feat. Samuel Seo

韓国でYouuuっぽさが出せるとすれば、(jeebanoffももちろんだけど)一方でoceanfromtheblueやSamuel Seoあたりもいる。そのタッグだとこのWingsがまさにそうで、これはoceanfromtheblueの良さが存分に詰まった楽曲だと思う。


韓国のこの類の楽曲にはだいたいのものに海外から”Sooooo underrated 🙁 “のようなコメントがついているんだけど、海外から「もっと評価されるべき」なんて言われるのは最高だろうなあ。

というわけで楽曲紹介は途中から全くTRAPSOULではなくなってしまったけど、最近はこんなのを聴いているという話でした。